研究概要 |
皮膚は様々な外的刺激にたいして、Th1,Th2,Th17型免疫反応や、免疫寛容などの様々な免疫応答を誘導する、多能な免疫臓器の一つである。ところが、皮膚における免疫応答の多様性を規定する因子については以前不明な点が多い。そこで、外的刺激に対する免役応答に関与する分子の同定とその役割の解明が当研究の目的である。本年度はTh1型遅延型過敏反応の代表である接触過敏反応におけるinterferon(IFN)-・とprostaglandin(PG)E2の役割の解明を行った。以前より、IFN-・はTh1細胞が惹起時に大量に産生することは知られていたがその役割の詳細は明らかにされていなかった。我々は、IFN-・遺伝子欠損マウスでは接触皮膚炎反応が減弱し、その作用部位がadoptive transfer modelにより、惹起相にあることを示した。さらにIFN-・が表皮角化細胞に作用し、大量のTh1系の細胞を誘導するケモカイン(IP-10,Mig)を誘導し、一方表皮ランゲルハンス細胞に作用し、Th2系のケモカイン(MDC,TARC)の産生を抑制し、よりTh1系の細胞の動員を促していることを明らかにした。一方、皮膚樹状細胞がPGE2を産生していることを明らかにした。そして、そのPGE2がnaive T細胞に存在するPGE2受容体の一つであるEP1に作用し、T細胞をTh1への分化を促進させていることも見出した。そのため、EP1受容体欠損マウスでは、接触皮膚炎反応が著しく減弱していた。EP1受容体アゴニストを投与することにより、T細胞の分化がTh1へ誘導されることもin vitroの実験より明らかになった。 以上のように、皮膚を介した免疫応答における重要な分子の同定と役割の解明を行い、臨床応用の可能性を示した。
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