研究課題
本研究の目的は、当科手術検体を用いて、それぞれの癌細胞における機能膜蛋白質である複数の薬物輸送体及び代謝酵素蛋白群の発現をプロテオミクスにて網羅的同時絶対定量し、その特異的蛋白発現プロファイルと臨床における抗癌剤治療成績との相関を検討することにより、新規抗癌剤感受性予測システムを構築し、その臨床応用を目指すことにある。まず、当科における外科治療を行い、臨床病理学的因子に関して統一されたフォーマットでデータベース化し、追跡調査を継続し、腫瘍マーカー・画像診断等から各化学療法の効果判定を各臓器別の癌取り扱い規約に従って行い、同様にデータベース化を行った。次に、収集保存した臨床検体を用いて細胞膜ペプチド試料を作製し、LC-MS/MSにて、取り込み側のSLC輸送体群、排泄側のABC輪送体群を同時絶対定量を行い、網羅的な輸送体蛋白発現プロファイルとしてデータベースに登録してきた。プロテオミクスに推奨される検体は未固定凍結標本であるが、わずか数アミノ酸のペプチドが組織内に温存していれば、蛋白構造が一定ではなくても解析可能である可能性があり、ごく最近、加熱処理による抗原賦活の応用とトリプシンによる消化処理を組み合わせて蛋白抽出効率を高めたLiquid Tissue^<TM> MS Protein Prep Kit が開発され、また固定化組織と凍結組織の蛋白抽出物両者の発現スペクトルプロファイルが似ていることも証明された。ホルマリンにより化学的に架橋され脆弱と思われていた蛋白質の保存状態は想像以上に良く、固定化病理標本からの蛋白抽出法として注目され、従来のプロテオミクス研究の意表を突く展開が見えつつある。これに伴い、パラフィン切片から正確に高速・大量に回収可能な新しいレーザーマイクロダイゼクションシステムや専用スライドグラス等の新しい技術プラットフォームも開発されてきた。そこで当科手術症例のホルマリン固定化標本を用いて、最新の臨床サンプル前処理技術と高感度に蛋白質発現解析を行うためにカスタマイズされたLC/MSシステムにより、早期診断、将来の疾病への罹患、今後の病態の変動・予後、治療への反応性予測に寄与する特異的新規バイオマーカー蛋白質を探索することとし、独立行政法人物質・材料研究機構チノテクテクノロジー融合センター共同研究型支援課題に申請・採択された。
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