研究概要 |
本研究の目的は, 血圧反射モデリング手法を駆使しロボット工学的設計手法を応用して, 微細径の形状記憶合金線維(バイオメタル)と現在開発中のナノセンサを駆使して心筋の機能と血行動態を探知し, 制御工学に基づいて補助循環の必要性(パッシィブ/アクティブ) を計算する右図の超小型の埋込型マイクロ人工心筋を開発することにある. これは生体の血液循環系にとって"必要なときに必要なだけ" 心臓の血液拍出を補助するもので, 心臓の外面に設置されるため血栓の形成等の心配もない. このような血行動態を自動で判断し, 必要な心マッサージを施すというような完全埋込型の高機能超小型人工心筋は申請者らの考案した装置以外になく, 心筋虚血部位などを的確に補助しつつ心臓全体の機能を維持するという発想は内外にない. 本年度は,完全埋込人工心筋システムのプロトタイプを開発, 試作し, さらに局所的にwall-thickening effectを再現できる収縮補助可能なメカニズムを有する装置を用いて, 血行力学的効果を検討した. 健常成山羊において, 心電図と同期させることにより生体心臓の収縮に生理学的に整合する駆動系制御を調べ, 電気生理学的心筋収縮の遅延を加え, 一心周期の20%の位相遅れを持たせることで, 現在開発中のシステムでは至適拍出補助が可能であった. これらの基礎検討に基づき,動物倫理委員会の定める規定に厳密に則り, 1ヶ月以上の慢性動物実験を2例実施した. 覚醒下健常循環状態の成山羊においりて, 現在開発中のマイクロ人工心筋による心補助装置を心臓壁に装着し, 完全埋込時の性能評価を検討した結果, 生体心臓の収縮に同期して心臓外部からデバイスによる力学的補助を行うことによって, 血行力学的に有効な心拍出量の増大, 収縮期圧の上昇を得ることが示された.
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