本研究の目的は、ロボット工学的設計手法を用いて、超微細径の形状記憶合金線維(バイオメタル)と現在開発中の血圧反射モデリング手法と微小センサを用いて心筋の機能と血行動態を探知し、制御工学的に補助循環の必要性(パッシブ-アクティブ)を計算する超小型のマイクロ心筋を開発することにある。これは、生体の血液循環系にとって"必要なときに必要なだけ"心臓の拍出を補助するもので、心臓壁面に装着し心臓の血液拍出を補助するもので、心臓の外面に設置されるため血栓の形成等の心配もない。このような血行動態を自動で判断し、必要なマッサージを施すという完全埋め込み可能な高機能超小型人工心筋は、申請者らの考案した装置以外になく、心筋虚血部位などを的確に補助しつつ心臓全体の機能を維持するという発想は内外にない。本年度は、ナノテク形状記憶合金線維(100MPaのオーダで収縮力を発生し、直径数マイクロメートルまで加工可能な線材)を用いたロボティクス人工心筋を、生体心臓の解剖学的構造と機能的に癒合させる設計として開発を進めた。開発プロセスでは、血管系のモデリングに基づく人工心筋の生体との整合性の高い構造と制御法の検討を行った。とくに、(a)微小コントローラと計測制御系の実装、(b)心筋の解剖学的構造・メカニクス解析に基づく有効な補助効果を実現するマイクロ構造設計の具現化、(c)計測制御に基づく適応制御法の検討と生体の収縮変位と協調する制御方法のシミュレーションを、健常性山羊を用いた動物試験評価と併せて行い、循環動態の血行力学的評価を行った。昨年度までに得られた本研究成果とあわせて、循環生理学的に生体のニーズにみあう心臓拍出支援を実現する慢性実験評価へと展開しつつある。
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