研究課題
本研究の目的は頭部外傷受傷時における衝撃波、それに付随して発生するキャビテーションの関与の有無を明らかにし、それが脳損傷に与える影響と機序を解明した上で、受傷時の予防手段の開発に繋げることにある。本年度も引き続き衝撃波頭部外傷動物モデルを用いて衝撃波およびキャビテーションにより起こる変化を組織学的・免疫組織学的・機能的に経時的に検証し、既に方法論が確立されている既存の頭部外傷モデル、脳虚血モデルにおける組織学的・免疫組織学的・機能的変化との比較を行い、脳実質損傷における衝撃波およびキャビテーションの関与の有無を明らかにすることを目的として検討を行った。8週令雄性SDラット右頭頂部に全麻下に骨窓を設け、アジ化銀を用いて衝撃波を発生、硬膜上から脳に単発照射を行った。照射過剰圧により1.5MPa以下、II.5〜10MPa、III.10〜15MPa、IV.15〜20MPaの4群に分けた。経時的変化としては照射1、3、24、72時間後において標本を摘出した。III群以上では衝撃波照射側に照射部を中心に脳内出血・壊死が認められ、対側には神経細胞の紡錘形変形を認めた。これは過去の文献から衝撃波通過後に生じる変化と考えられた。エバンスブルーを照射直後に静脈内投与すると、出血・壊死が認められた領域外から脳梁を介して反対側におよぶ範囲内に色素の漏出が認められ、血管透過性の亢進を示唆する所見と考えられた。血管透過性の変化を示す機序としては摘出標本に対して免疫組織学的検討を行い、matrix metalloproteinase(MMP)2および9の増加を認める傾向にあり、経時的変化・閾値を含めて検討を継続している。本年度はさらに対側損傷を起こす機序の考察として頭蓋模擬モデル(音響インピーダンスの観点から頭蓋骨はアクリル、髄液は生理食塩水、硬膜はセロファン膜、脳は10%ゼラチンで模擬) を作成し、衝撃波を照射後の対側で起こる現象の圧測定と高速度撮影による可視化実験を行った。その結果、対側では頭蓋骨に反射した反射波が組織内を通過するのに同期してキャビテーションの発生が圧履歴と可視化実験より示唆され、本研究で得られた画期的な結果であると思われる(英文誌投稿)。本研究はカリフォルニア大学脳脊髄外傷センターと共同して7TMRIによる浮腫、高次の機能評価へと発展・移行する。損傷防止機構に関しては引き続き流体研との共同研究により検討する予定である。
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