平成19年度に引き続き20年度も眼循環のトランスレーショナルリサーチを実践すべく基礎および臨床研究を行ってきた。そこから以下のような成果を得た。 1) in vitro摘出血管 Texas A&M大学との共同研究により旭川医科大学にブタ摘出血管を用いたin vitro実験系を国内で初めて構築した。そして、炎症マーカーであるC反応性蛋白(CRP)が酸化ストレスを亢進させて網膜血管内皮からのNO産生能を低下させることを初めて明らかにした。また、高脂血症治療薬スタチン前投与により、CRPによる血管内皮機能障害が予防できることも明らかにした。 2) in vivo生体実験系 ネコを用いたin vivo生体実験系では、高酸素負荷時の網膜血流低下反応に着目し、負荷終了後の血流回復反応にはETB受容体を介した血管内皮細胞からのNO産生が関与していることを初めて明らかにした。高酸素負荷時の網膜循環動態を評価することにより、非侵襲的に網膜血管内皮機能を評価できる可能性を示した。また、新しい緑内障治療薬タフルプロストにより網膜血流が増加することを明らかにし、この治療法の網膜疾患への応用の可能性を示した。 3) 臨床研究 2型糖尿病患者の糖尿病網膜症に対する網膜光凝固の中心窩脈絡膜循環への影響を検討し、光凝固後は血流が改善することを明らかにし、光凝固後の重篤な合併症である黄斑浮腫に対して中心窩脈絡膜循環の障害が影響を及ぼす可能性が示された。
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