転写因子Sox9の新規転写コファクターの同定とその解析を行った結果以下のような研究結果が得られた。 1、Sox9の標的遺伝子であるII型コラーゲンのプロモーター領域を用いたスクリーニングシステムを構築し、軟骨細胞用細胞株ATDC5より作成した完全超cDNAライブラリーを用いて網羅的スクリーニングを行った。スクリーニングされた遺伝子の中にはWntやSox5などの軟骨細胞分化における重要性が既知である遺伝子が検出されたことから、スクリーニングシステムは有効であると考えられる。 2、スクリーニングされた遺伝子の中で新規性が高く、かつ転写因子に属する遺伝子を選び出し、Sox9の転写活性に対する効果を検討した。最終的に、Sox9の転写活性を強く増強する遺伝子を同定し、Sox9 Activating Factor(SAF)と名付けた。 3、そのうちの一つであるSAF1は精巣や胎生15.5日齢の四肢などSox9が生物学的に重要な組織に強く発現していることが明らかとなった。 4、SAF1はSox9と物理的に結合して協調的に作用することにより軟骨細胞分化を促進することが明らかとなった。さらに精巣でのSox9標的遺伝子であるミューラー管阻害因子(MIS/AMH)に対しても同様の効果を示すことを見出した。したがって、SFA1はSox9の共役転写因子として機能していることが明らかとなった。 5、さらに詳細な解析の結果からSAF1とSox9の結合には、SAF1のC末端領域が重要であることが明らかになった。 現在SAF1のin vivoにおける重要性を明らかにするために軟骨細胞特異的にSAF1を過剰発現させるトランスジェニックマウスの作成を行っているところである。
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