研究概要 |
本研究課題はヒト抜去歯から細胞を分離し,その分化を制御するメカニズムをふまえた上での歯の歯根部分の再生を目指したものである. 平成19年度は,所属機関である岡山大学倫理委員会の許可を得て,ヒト抜去歯からの細胞の分離を始めた.今回分離を行った細胞は,研究代表者らによってすでに同定されている歯乳頭由来幹細胞(Stem Cells from Apical Papilla;SCAP),歯髄幹細胞(Dental Pulp Stem Cell;DPSC)のみではなく,これらの細胞が分離できる歯よりもさらに幼弱な(おおよそ歯冠形成期から歯根形成初期までの)智歯の間葉組織から細胞を分離することに成功した. 歯根未完成の歯から分離できるSCAPが歯根完成後の歯から分離できるDPSCよりも増殖能,組織再生能に優れることを鑑みると,今回分離した幼弱な歯由来の間葉系細胞は,再生医療への応用の見地に立つとさらに優れた性質を待つ可能性がある.現在,その遺伝子発現プロファイルと免疫不全動物を用いた移植実験系での組織再生能を検討中である.また,同じ幼弱な智歯から分離した歯に関連した上皮細胞と共培養することによる,遺伝子発現の変化を確認中であり,上皮間葉相互作用の観点に立った分化制御因子の同定を目指している.
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