研究概要 |
1. ヒト抜去歯から分離した細胞の分化メカニズムの解明 ヒト歯小嚢組織から分離したcytokeratin 14陽性細胞群の,口腔間葉細胞と歯胚間葉細胞との共培養系におけるamelogenin遺伝子の発現レベルを,定量RT-PCR法で解析した.その結果,歯小嚢組織由来上皮細胞を歯胚間葉細胞と混合して共培養すると,そのamelogenin遺伝子の発現は促進されることを確認した.この遺伝子の発現促進はメンブレンを用いた分離共培養では認められなかった.さらには,口腔間葉細胞との共培養での遺伝子発現の促進効果はほとんど認められないことから,この発現促進効果は歯胚間葉細胞特有であり,上皮細胞と間葉細胞の物理的な接触を介して行われているものと推測された. また,歯小嚢組織上でアメロブラスチン抗体を用いて免疫組織化学染色を行い,形態学的に分泌期エナメル芽細胞と推測される細胞はアメロブラスチン陽性であることを確認した. 2. ビーグル犬モデルを用いた歯根再生研究 イヌ抜去歯から分離した歯髄細胞と歯根膜細胞の硬組織形成能を確認するため,HAならびにbTCPキャリアと共に免疫不全マウス背部皮下に移植した.その結果,両細胞ともに硬組織形成能力を有していることを確認した. 歯根再生研究においてもHAとbTCPを使用した.2種のキャリアを歯根形態に調整し,細胞を播種し,イヌ顎骨に移植した.1頭あたりの移植体は4本とし,HA2個,bTCP2個とした.すべての移植体内部には歯髄細胞を播種し,それぞれの2個のうち1個は歯根膜細胞の細胞シートで被覆し顎骨に形成した移植窩へ移植した.免疫学的な拒絶の可能性を考慮し,歯根再生実験はすべて自家細胞移植とした.イヌ顎骨へ移植した再生歯根をレントゲン的に評価したところ,bTCPはおおよそ8週程度で吸収像を認めた.一方,HAには吸収像を認めなかった.レントゲン的には硬組織形成を認めなかった.両キャリアともに,一層の透過像に囲まれており,移植体周囲には軟組織が維持されていることを確認した.
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