3年計画で行う本研究の1年目にあたる19年度は、全国の訪問看護ステーションへの郵送調査にて末期がん患者の病院から在宅への移行時の支援・状況の実態および在宅死との関連性を明らかにした。調査対象を末期がん患者を受け持った訪問看護師とし、対象機関はWAMNETにて看取り介護を行っている全国の訪問看護ステーションから無作為抽出した1000施設のうち、研究協力の承諾の得られた訪問看護ステーション409カ所とした。調査方法は、調査票の郵送法とし、質問項目は在宅療養移行時の情報提供(24項目)、病院看護師による患者・家族への指導状況(19項目)、在宅移行後の訪問看護指導(同19項目)、患者・家族の状況、担当看護師の状況とした。倫理的配慮として、調査票にはプライバシーの保護を明記し、対象者の調査への参加は自由意思であることを明記した。分析は、在宅療養移行時の退院前後の支援の状況と患者・家族の肯定的評価との関連をロジスティック回帰分析にて行った。 分析対象593例の末期がん患者のうち、最終的に患者の肯定的評価の得られた対象が390例、家族からの肯定的評価の得られた対象が475例、在宅死を実現した対象が250例であった。患者の平均年齢は65.0±14.8歳、性別は男性51%であった。患者・家族の肯定的評価に有意に関連した要因として、在宅療養移行時の情報提供24項目中緊急時の連絡体制や病状説明など10項目、および病院看護師による患者・家族への指導状況および在宅移行後の訪問看護指導19項目のうち生活ケア指導や在宅サービス関連のもの9項目が挙げられるとともに、病院での在宅移行時の指導は不十分であると訪問看護師の大部分が認識していることが明らかにされた。本研究の結果から、今後は末期がん患者の在宅療養移行に関する病院看護師と病棟看護師の連携を、上記で得られた項目を中心として重点的に行っていくことが重要であるとともに、連携システムの構築が重要であることが示唆された。
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