本年度は3年計画のうちの最終年度に当たる。初年度には全国の訪問看護ステーション409箇所の末期がん患者593例を対象とした入院中末期がん患者の在宅移行時の実態調査を実施し、在宅死を促進する要因として、在宅移行直前の病院スタッフによる早期からの在宅医療チームへの紹介、在宅死目的の退院であることの患者・家族への周知、および退院直後の在宅医と訪問看護師の週3回以上の連携、医師と看護師の在宅療養支援診療所としての契約という要因を明らかにした。 2年目は、これらの全国調査の結果をもとに、末期がん患者とその家族向けの在宅移行時の介入支援マニュアルを作成した。内容は、(1)病院看護師による緊急時の連絡体制や病状説明などの在宅療養移行時の情報、(2)病院看護師による退院前に伝達しておくべき退院後の患者・家族へのケア内容、(3)訪問看護師による生活環境や家族支援体制を加味した在宅移行後のケア内容、および(4)訪問看護師による実際に利用可能な在宅サービス関連の情報とした。また、末期がん患者の在宅移行に際する病院看護師と訪問看護師を対象としたコミュニケーションスキルマニュアルも作成した。そして、これらマニュアルの適切性と実施可能性を検討するために、研究協力の得られた総合病院1病院と各連携訪問看護ステーションの病院看護師及び訪問看護師15名を対象に予備調査を行った結果、病院や訪問看護ステーションの特徴、及び医師やケアマネジャーなどの地域の医療資源の状況などを加味した上での病院と訪問看護師間の連携マニュアルの作成が必要であるなどの修正意見が出された。これらの意見を基に、病院看護師と訪問看護師の連携に基づく末期がん患者とその家族に対する継続看護支援法を完成した。 最終年度は、作成した支援法の有効性を検討する無作為比較試験を、研究協力の得られた病院3病院と各連携訪問看護ステーションを対象に実施した。そして、本支援法により患者の痛みおよび家族の不安の軽減、また看護師のコミュニケーションスキルの向上における有効性が示された。今後これらの成果を論文にまとめ公表予定である。
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