研究課題
本年度は、前年度同様、与えられた2つの1変数多項式(一方の多項式がもう一方の多項式の導関数でないようなもの)に対し、それぞれの多項式の係数に摂動を加えることにより、互いに共通因子をもつようにし、近似GCDを求める算法を研究した。本年度の研究では、前年度までに構成した、制約つき最適化法の一つである勾配射影法を用いた近似GCD算法を「GPGCD法」(GPは勾配射影法のGradient-projectionの頭文字)と命名し、以下の成果を得た。●最適化問題の解法として、オリジナルの勾配射影法と、田邉による一般化の一つである修正Newton法を比較し、計算機実験により、両者が本質的に同様の収束性を示すこと、ならびに、修正Newton法が効率面でより優れていることを示した。よって、GPGCD法では、最適化問題の解法として、修正Newton法を採用した。●昨年度開発した算法は、2つの実係数多項式に対するものだったが、本年度の研究で、2つの複素係数多項式に対する算法の拡張を開発した。本拡張では、複素数の係数を実部と虚部にわけ、実数上の最適化問題に帰着させている。計算機実験により、複素係数に対する拡張についても、最適化法のアプローチをとる既存の算法と比較して、最大30倍程度の効率化が図られることを示した。●GPGCD法の実装を数式処理システムMaple上に行い、プログラムを公開した。今後は、算法の収束性の理論/実験両面からの解析、計算量の理論/実験両面からの解析およびより効率化を図るための工夫、3つ以上の入力多項式に対する近似GCD算法への拡張などに焦点を当てて研究を進める予定である。
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http://gpgcd.googlecode.com/