今年度は、XML変換モデルの数学的な定式化に関する研究を行い、一定の成果を得た。本研究では、XML変換の数学的枠組みとして近年注目を浴びている「マクロツリートランスデューサ」を拡張した「マルチリターン・マクロツリートランスデューサ」を提案した。この新しい枠組みには2つの利点があることがわかった。第1に、「マルチリターン・マクロツリートランスデューサ」は、真に「マクロツリートランスデューサ」よりも表現力が高いということを示すことに成功した。これは、ある変換が、前者では表現できて、かつ後者で表現できないことを示すことに他ならず、とくに「変換できない」という技術的に非常に難しい数学的証明を完成させたことは重要な成果である。第2に、XML変換においては、複数の変換器を直列合成することが頻繁にあるが、もし直列合成で実現できる変換が、同じ枠組み内で一つの変換器で実現できるなら、最適化に応用できる。従来のマクロツリートランスデューサでは、単純な変換と合成したものを実現することする不可能であることが知られていたが、本研究の「マルチリターン・マクロツリートランスデューサ」ではそれが可能であるということを示した。
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