今年度は、XML変換言語のコアの機能である、ツリ-問い合わせに関する研究を行った。本研究では、ツリ-問い合わせの中でも、特に表現力の高い、MSO (monadic second-order)論理による、n項問い合わせという問題を解くアルゴリズムを提案した。n項問い合わせは、ツリ-構造データ中の、関係のあるデータ同士を組にしたものの集合を返すという問題で、XML処理において重要であるが、従来のアルゴリズムは、単項の問い合わせしか対応しないか、もしくは効率の低いものであった。本研究で開発したアルゴリズムでは、入力のツリーのサイズと、出力の集合のサイズの両者に関して線形時間で計算できる高速なアルゴリズムであり、しかもコンパクトな表現で実行可能でき、従来の手法と比較して大きな優位性がある。また、今年度はこれまでの研究成果をまとめた著書に取りかかった。この著書では、XMLとツリ-オートマトンに関する基礎的な知識から始まり、パターンマッチ、XML型検査、ツリ-トランスデューサ、on the flyと呼ばれる高速ツリ-オートマトンアルゴリズム、パス表現とツリ-ウォーキングオートマトン、ツリ-オートマトンの様々な拡張、上述のMSOや、MSOのn項問い合わせのアルゴリズムに関しても記述する。ツリ-オートマトンアプローチに基づくXML処理に興味を持つような幅広い読者層を想定したものになる。すでに、ケンブリッジ大学出版社と契約済で、全文英文の著作となる。
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