量子アルゴリズムをエラーの影響が少なくなるように実現するには、アルゴリズムを実現する量子回路をエラーの影響が少ないと考えられる回路モデルで実現することが重要であると考えられる。そこで、今年度は現在最も操作エラーが少ないと考えられている量子計算の実現モデルであるLinear Nearest Neighbor(LNN)アーキテクチャと、状況によっては物理的な実現が容易であると考えられている多準位系を用いて回路設計する手法に関して以下のような研究を行った。 1. 量子回路設計にエラーを考えた場合多準位系を用いたほうが現実的となる場合もあると考えられる。そこで多準位系の量子ゲートによる量子回路設計のために、与えられた任意のn次元のユニタリ行列を効率よく基本量子ゲートの積に変換する手法を考案した。具体的には、従来からあるCosine-Sine分解における分割のサイズを適切に調整することにより、ある程度の規模の入力数ならば従来手法よりも少ない基本ゲート数で与えられたユニタリ行列を分解することができることを示した。 2. 現在最も実現の可能性が高いと考えられている量子計算の実現モデルであるLinear Nearest Neighbor(LNN)アーキテクチャは比較的エラーが少ないと考えられる。そこで、任意の量子回路をLNNアーキテクチャ上で実現できるようにSWAPゲートを挿入して回路を変換する手法を考案した。提案手法は、ナイーブな手法に比べて少ない計算時間でSWAPゲートの数を削減することができ、また、今までに報告されている人手で設計された回路をより少ないSWAPゲート数でのLNN上の量子回路へ変換できる。
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