量子コンピュータ実現に向けて、量子回路の様々な物理的な実現方法が検討されているが、エラーに強い量子回路はその各ゲートの操作にある種の制約を課す必要があると考えられている。代表的なモデルとしてキュービット同士がインタラクション出来る距離に限りを設けることが考えられている。具体的には、隣接したキュービット同士のインタラクションしか物理的に実現することが出来ないというモデルが最も妥当であると考えられている。その回路モデルで量子回路を実現するためには、一般的な量子回路を隣接したキュービット同士しかインタラクションを許さない、Linear Nearest Neighborと呼ばれるアーキテクチャに変換する必要がある。そのため、近年、量子回路をLNNアーキテクチャに変換する様々な手法が提案されてきている。しかし、それらのほとんどの手法はゲートの順序を変更できる可能性に関しては考慮しておらず、最適な変換とはいえない。そこで、今年度は隣接互換グラフと呼ばれるデータ構造を利用することにより、ゲート順序も考慮してLNNアーキテクチャへの最適な変換を行うことが出来る問題の定式化を行った。その手法により、エラー訂正符号として有名はSteane符号のエンコーディング回路をLNNアーキテクチャへ最適に変換することが出来た。また、AQFTの回路に関して、今まで知られている最良の手法の結果を改善することもできた。その他、前年度から引き続き、量子回路の等価性判定の手法の高速化の種々の手法の開発と前年度に開発したDDMFから量子回路を設計する手法の改良およびベンチマーク評価を行った。
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