研究概要 |
<研究目的> 本研究では、大規模連立一次方程式に対する実用的かつ高品質な精度保証付き数値計算法の開発を目的としている。具体的には、連立一次方程式が与えられたとき、係数行列の正則性を保証し、計算機上で解いて得られた数値解の厳密解に対する絶対誤差ベクトル・誤差ノルムあるいはその相対評価の上限を、高速かつ高品質に計算する精度保証付き数値計算法の理論とアルゴリズムを開発する。 本年度は、下記の2点を目標とした。 i)正定値行列やその他の特殊な構造を持つ疎行列に対する高速な精度保証法の考案 ii)高精度演算を用いた高品質な精度保証法の開発 <研究方法> 本年度の研究目的i),ii)について研究を推進し、学会発表での反応や他研究者との議論をフィードバックし、さらに研究を進める。また、それに関連する成果の中で、論文を発表可能なレベルに達したものは、論文発表を行う。 <研究成果> 研究目的i)について、スパースな正定値行列に対するメモリ量を低減した精度保証方式を開発し、学会等で発表した。本方式により、連立一次方程式の係数行列が100万次元程度の疎行列であっても、正定値行列であれば、その正定値性の保証も含めて数値解の精度保証が可能であることが示された。また、研究目的ii)に関して、高速かつ高精度なベクトルの総和や内積計算法を開発し、学会等で発表した。また、極めて悪条件な線形問題に対する精度保証方式であるRump法の収束性に関する論文を発表した。このRump法は、Rumpによって開発されてから、20年以上その解析がなされていなかったが、本研究によってRump法の部分的な解析に成功した。
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