本年度は、線型方程式に対する精度保証法自体の品質を高めるための研究を実施した。そのために、既存の高速かつ安定性のある数値計算ライブラリをそのまま活用できるような精度保証法に、高精度演算を用いた高品質な精度保証法を融合させる方式を提案した。 本年度の具体的な研究成果は以下の通りである。 i)高速かつ高精度なベクトルの総和・内積計算アルゴリズムの開発 ii)線形方程式に対する、高精度演算を用いた高品質な精度保証法の開発以下では、上記の研究成果の具体的な内容について述べる。 i)については、近年に研究者らが開発したアルゴリズムの並列化を行い、共有メモリ型計算機上で有効性を確認した。また、計算結果の精度を保証するという条件の下で現在、世界最高速のアルゴリズムを開発した。このアルゴリズムを用いると、問題の難しさに対して適応的に計算精度を上げて必ず要求された精度まで正しい結果を得ることができる。本研究は、あらゆる科学技術計算の基礎となるため、応用範囲が極めて広い。直接的には、線形方程式の直接解法・反復解法、固有値分解、特異値分解等の数値線形代数への応用が挙げられる。 また、ii)については、線形方程式の近似解について、過大評価・過小評価の少ない誤差評価方法を提案した。これは、線形方程式に対する精度保証理論と残差反復法の高精度計算を利用して、誤差の下限と上限を同時に効率良く計算することにより実現している。そのために、i)で開発したアルゴリズムを利用している。これにより、誤差評価自体の質が判定可能となった。
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