研究概要 |
本年度は、疎行列の構造や性質に応じた精度保証アルゴリズムについての研究を推進するのと同時に、悪条件問題に対する高品質な数値計算法に関する研究を実施した。そのために、既存の高速かつ安定性のある数値計算アルゴリズムと高速かつ高精度な行列計算アルゴリズムの融合が必要であったため、それについての研究を実施した。 本年度の具体的な研究成果は、以下の通りである。 i) 優対角行列、正定値行列等の特殊な構造を持つ疎行列、さらにより一般的な行列に対する高速な精度保証法についての検討を開始した。 ii) 悪条件問題に対する高品質な数値計算法を開発した。特に、LU分解やCholesky分解を高精度に実行する方法について検討した。 iii) ii)と並行して、高精度演算を用いた高品質な精度保証法を開発した。 iv) ii),iii)を融合するための手法の検討を開始した。 i)については、既存の精度保証法の詳しい調査を行い、それを論文としてまとめ、さらに一般の疎行列に適用可能な方法の検討を開始した。ii)については、条件数の大きさに応じて反復的に計算精度を増加させて高精度な解を得る適応的な行列分解法を開発し、それらがLU分解やCholesky分解などの多くの重要な行列分解に適用可能であることを示した。iii)については、ii)で開発した手法を用いて、連立一次方程式の解や行列式の値を精度保証付きで高精度に求める方法を開発した。さらに、iv)については、ii)とiii)を統合したスケーラブルかつポータブルなアルゴリズムについての検討を開始した。
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