研究課題
本年度は、本研究全体の最終目標である疎行列の構造や性質に特化しない一般的な精度保証アルゴリズムについての研究を推進した。このためには、既存の数値計算アルゴリズムでは解けないような問題に対する本質的な対策が必要であり、そのために高速かつ高精度な行列分解アルゴリズムについての研究を行った。具体的には、特別な構造を持たない一般的な疎行列に対する高速な精度保証法の考案とそれに並行して、高精度演算を用いた高品質な精度保証法の開発を行った。特に、行列の疎性をなるべく失うことのない、疎行列系の演算に有効な方式を開発した。具体的には、一般の非対称疎行列が与えられたとき、その転置行列との積の高精度な計算及びその結果に対して高精度なCholesky分解を実行するプログラムを開発し、それを利用して、一般の非対称疎行列の最小特異値の下限を求める高速なアルゴリズムを提案した。従来は、単調行列や対称正定値行列等の特殊な性質を持つ行列に対してしか有効な精度保証法が存在しなかったが、これによって一般の疎行列に対しても精度保証が現実的に可能となり、一気に精度保証の適用範囲が拡張された。この方式では、与えられた行列の疎性や構造にもよるが、数十万次元の行列であれば、大型計算機を用いなくても実用的な計算時間で精度保証が可能であることを数値実験により示した。また、それらについて学会発表・他研究者との議論を行った。さらに、それらの結果を考慮しながら、論文発表を行った。
すべて 2010 その他
すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件) 学会発表 (7件) 備考 (1件)
Reliable Computing
巻: 14 ページ: 24-45
SIAM Journal on Matrix Analysis and Applications
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