本年度は、インターネットサービスの提供を目的としたクラスタ型並列サーバ計算機システムの低消費電力化を目的として、前年度に開発したリクエスト状況に応じて応答時間制約を満たしつつ消費電力が最小になるシステム構成を求めるためのモデル化技術、およびシステム構成最適化アルゴリズムを、より汎用的なサーバ環境に適用できるように改良した。具体的には、複数階層に機能分散されているデータセンターなどのサーバ環境や、性能や電力消費の特性が異なる複数のサーバ計算機により構成されるシステムなども想定し、特徴の異なる複数種類のリクエストも考慮しつつ、リクエストレートと性能、および消費電力の関係をモデリングし、その上でリクエスト状況に応じて応答時間制約を満たしつつ消費電力が最小となるシステム構成を求めることができるようにアルゴリズムを改良した。そして、上記で述べたような現実に近いクラスタ型並列サーバ計算機環境の実験システムを新たに構築し、開発したアルゴリズムを用いた場合の性能(応答時間制約内にリクエストを処理できるかのサービス品質)、およびその時の消費電力について定量的に評価を行った。その結果、開発したアルゴリズムを用いることで、従来型のウェブサーバシステムに比べ消費電力量を大幅に削減できることがわかった。このため、開発したモデル化技術、およびシステム構成最適化アルゴリズムが正しく動作していることが確認でき、将来的な課題であるインターネットサービスを提供するための消費エネルギー増大の問題に対し、本研究課題で得られた技術、および知見は一つの有効な解決策となり得ると考えられる。
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