研究概要 |
平成20年度は、(1)自律分散ロボットのロバストな協調アルゴリズム、(2)P2Pシステムにおけるランダム化を利用したスケーラブルな検索手法、(3)小型受動的モバイル端末群の自己安定協調アルゴリズムの3課題について研究を行い、成果を得た。以下それぞれについて詳細を述べる。(1)自律的に移動可能なロボット群は分散システムの一種と見なすことができる。個々のロボットは、周辺環境を観測し、それに基づき自律的動作するが、センシングに対する物理的なノイズの影響等により、全ロボットで一貫した状況が観測できるとは限らない。本年度は, 昨年度より遂行していた観測エラーに対してロバストな協調アルゴリズムについてさらに研究を進め、いくつかの結果を得た。またランダム化を用いたアルゴリズムの計算量についての解析を行った。(2)大規模P2Pシステム上において、各計算機により分散管理されているリソースを低コストかつ高速に検索するアルゴリズムが強く求められている。検索を効率化するために、各計算機が自身の所有するリソースの一覧(インデクス情報)を周辺の計算機にあらかじめ散布する手法が存在するが、本研究では、ノードが動的に参加、離脱を繰り返す環境における低通信コストのインデクス情報散布法、およびその性能の確率的な解析を行った。(3)携帯端末網やモバイルセンサーネットワーク等のシステムは、複数の計算機が空間中を移動し、近接することで情報交換を行う、一種の「反応系」と見なすことが可能である。本研究では、従来から考えられていたモバイル分散システムを上記のような系と見なし、その上でのロバストかつ安定的な分散アルゴリズムの実現可能性について考察を行った。特に、自己安定リーダ選挙問題について、その可解性とメモリ計算量の関連を明らかにした。
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