研究概要 |
本研究の目的は, GPU(Graphics Processing Unit)を装備する多数のパソコンを一つの仮想的な高性能計算機GPUグリッドとして動作させるための資源管理手法を開発することである. さらに, 京速計算を実現しうる計算基盤としてGPUグリッドの有用性を実用的な応用とともに示す. 平成20年度は, 前年度までに開発した資源管理手法の拡張および応用の高速化に取り組んだ. 前者は, パソコン所有者が描画アプリケーションを実行中に, 背後で科学計算を並行実行するための手法を検討した. 検討した手法は協調的マルチタスクを実現するために, 科学計算側のタスクを細分割し, 描画アプリケーション側に画面更新の機会を適度に与える. スクリーンセーバ方式に基づく従来手法と比較して, 科学計算に起因する外乱は増大してしまうが, 科学計算側のスループットは向上できることを予備実験として確認した. これにより事務系アプリケーションやゲームを操作中に科学計算を高速に並行実行できる可能性があることが分かった. 一方, 応用に関しては, 昨年度に引き続きバイオデータベースに対して共通部分を探し出す配列アライメントの高速化に取り組んだ. 新しい開発環境CUDA(Compute Unified Device Architecture)を用い, データ参照量を1/140に削減するなど, CUDA固有の最適化を施した. 結果, OpenGLによるGPU実装と比べて約6倍の高速化を果たし, CPU換算で48台に匹敵する性能を達成した. 今後, 拡張した資源管理手法および高速化したアライメント実装を用い, 日常業務に用いる計算機上で引き出せる性能を検証する予定である.
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