研究概要 |
地球環境に対する意識の高まりと,インターネットの発展に伴う消費電力の上昇が続いていることから,ネットワークにおける省電力化技術の研究開発は重要な課題となっている.そこで本研究では,スイッチ間のトラヒック特性に応じて適切な通信速度を設定することで,ネットワークにおける省電力化を実現する機構について検討し,必要な機能の研究開発を行った.本年度の研究成果は以下の通りである. (1)計測 ネットワーク機器における消費電力を調査するために,代表的なL2,L3スイッチの消費電力を計測した.その結果,通信速度が上昇すると消費電力量は増加すること,特に100 Mb/sから1 Gb/s間の消費電力量の差が大きいことを確認した.さらにトラヒック特性に応じて適切な通信速度予測を行うための基礎データとして,大学内の幹線トラヒック特性の計測を実施した. (2)予測手法の開発,及び予測に基づくリンク制御アルゴリズムの検討 省電力化のためにスイッチ間で適切な通信速度を設定した場合でも,スループットや遅延といった通信品質特性の低下は避ける必要があるため,通信品質の低下を防ぐことができるよう安全側に重きを置いた予測手法を検討した.またこの予測に基づいて動的に通信速度を制御するために,スイッチ間を接続する際に用いられることが多いリンク集約技術(LACP, Link Aggregation Control Protocol)に着目し,LACPを拡張してトラヒック転送に必要な物理リンク数だけをスイッチ間でアップさせ,その他のリンクをスリープ状態にする機構を検討した.さらに多様なトラヒック特性を想定した複数のモデルをもちいてシミュレーション評価実験を行い,提案手法が遅延などの通信品質特性への影響を抑えながら省電力化を達成可能であることを明らかにした.
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