研究概要 |
無線端末が相互に通信し固定の基地局やアクセスポイントなどのインフラを必要とせずにネットワークを形成可能なアドホックネットワークを用いて,同一情報を確実に多地点へ配信する多地点情報配信技術がアドホックマルチキャスト通信である.アドホックマルチキャスト通信では,送受信者以外の端末もデータの中継を行い,さらにブロードキャスト性を有する無線通信によりデータが伝送されることから,第三者によるデータの盗聴・改竄などが容易であり,有線ネットワーク以上にセキュリティ面で脆弱である.本研究では,アドホックマルチキャスト通信の信頼性および安全性向上に主眼を置き,データを中継する第三者による盗聴・改竄を防止する経路制御プロトコルおよび高信頼アドホックマルチキャスト通信技術の開発を試みた.具体的には,以下の結果を得た. (1)送信者認証技術を適用したアドホックネットワーク経路制御プロトコルの提案 経路制御プロトコルでは経路計算のために定期的に各端末がトポロジ情報を交換する.このトポロジ情報を暗号化し送信者認証を行うことで,悪意のある端末からの経路改竄・データ盗聴を防止する経路制御プロトコルを提案し,その暗号化負荷および経路計算精度に関する性能評価を行った. (2)高信頼アドホックマルチキャスト通信技術の開発 上記(1)の経路制御プロトコルにおいては,暗号化および送信者認証のために端末間で交換される制御トラヒックが増加し,データ配送率の低下を招く.この結果,経路計算の基となるトポロジ情報の欠落が生じ,信頼性の高い経路構築が困難となる.そこで,トラヒックを削減し,確実な制御情報の配信を実現する技術として,ネットワークコーディングを利用した高信頼アドホックマルチキャスト方式を提案した.また,計算機シミュレーションによる性能評価を行い,本方式の配送率の点での有効性を明らかにした.
|