研究概要 |
本年度の研究においては、大規模ネットワークの解析手法の提案を行った。インターネツトの性能を決める重要な要素の一つに、TCPの輻輳制御が挙げられる。TCPトラヒックは現在のインターネットトラヒックの大部分を占めるにもかかわらず、大規模ネットワークの設計問題においては、TCPのフィードバック制御に基づく輻輳制御がほとんど考慮されていない。そこで本研究においては,100/1,000/100,000を越えるルータ/エンドホスト/リンク、そして、100,000本を越えるTCPコネクションが存在するネットワークを対象とした解析手法を提案した。 解析においては,ネットワークの各構成要素を独立のシステムとしてモデル化した。これらを相互接続することで、大規模ネットワークをモデル化した。さらに得られたネットワーク全体のモデル用いて、各リンクにおけるリンク利用率および、パケット棄却率、そして、TCPコネクションのスループットを導出し、ネットワークの輻輳個所およびその度合を示した。また,パケットレベルのシミュレーションを行い,解析結果とシミュレーション結果を比較し,解析の妥当性を示した.さらに,数値例から、我々の解析手法が、大規模ネットワークにおけるTCPコネクションの振舞いを適切に捉えていることを示した。加えて,我々の解析手法では,評価に必要な計算時間が,ネットワーク分野における代表的なシミュレータであるns-2とは異なり、ネットワークの帯域および伝播遅延に依存せず,大規模なネットワークの性能評価を短時間で行うことができることを示した。
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