本年度は、昨年度の検討した大規模ネットワークの解析手法を、北米のAbileneネットワークをもとにしたAbilehe-inspiredネットワークに適用し、ネットワーク中心部にあるコアルータのバッファサイズ縮小がネットワークおよびTCPコネクションに与える影響を評価した。 評価において、ルータ間に流れるトラピック量を"gravity model"の一クラスにしたがって決定した。具体的には、トラピックはエンドホストが接続されているルータ、edge routerから発生し、edge routerからネットワークに入出力されるトラピック量は、edge routerに接続しているエンドホストの数に比例すると考える。また、edge router間のトラヒック量に比例して、edge router間のTCPコネクション数が決定されるとした。 評価の結果、アクセスリンクの帯域が小さいとき(現在のネットワークにおいて)、コアルータのバッファサイズ縮小が、ネットワークおよびTCPコネクションに与える影響がなく、なんら利点はないことが分かった。これはアクセスリンクの帯域が小さいとき、コアネットワークに向かうトラピックが、アクセスリンクの帯域に制限されるためでる。そのため、コアネットワークの利用率がパケット棄却率またはラウンドトリップ時間に差を生じさせるほど大きくならない。 一方、アクセスリンクの帯域が大きいとき(将来のネットワークにおいて)、コアルータのバッファサイズ縮小は、コアルータを経由ずるTCPコネクジョンのスループットを減少させることが分かった。これは、コアルータのバッファサイズ縮小により、コアルータにおけるパケット棄却率が増加し、その結果、コアルータを通過するTCPコネクションと通過しないTCPコネクションとでスループットの不公平性が発生しているためである。研究の結果、コアルータのバッファサイズを縮小させるべきではないことが分かった。
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