研究概要 |
昨年度に引き続き, よりMANETに適した分散アルゴリズムの設計として, 「安全に収束する」自己安定分散アルゴリズムの研究をおこなった. 通常の自己安定分散アルゴリズムでは収束するまでに故障やトポロジーの変化が起こってしまうと, そこから新たに計算を始めることになる. つまり, 頻繁に起こる変化には対応し切れる保証がないというのが現実である. そこで, 故障が起こった後の任意の状況から, 短時間で解の質を問わない安全な状況に遷移させ, そこからは安全性を崩さずに最適な解に収束させるという「安全な収束」を実装する事にした. 昨年度扱った問題としては最小弱連結支配集合問題があるが, 今年度はこれに対して連結性を保証し, 近似比6の最小連結支配集合を求められるように改善を行った. 今後はさらに, 近似比の良いもの, 悪いものをそれぞれ設計し, 計算時間や性質を比較することも引き続き考えている. また, 自己安定分散アルゴリズムの一つの方向性として故障封じ込めの性質を持たせる研究がある. これは, 通常の自己安定アルゴリズムでは解状況で故障が起こった場合, どんなに小さな範囲の故障であっても全プロセスを巻き込んで回復に向かうという遷移が考えられるが, 故障封じ込めアルゴリズムでは解状況で故障が起きてから回復までに状態を変えるプロセスの数とステップ数を小さく制限するものである. この故障封じ込めの性質を備えたアルゴリズムの設計は非常に難しいとされている. 通常の自己安定アルゴリズムの性質として, 複数のアルゴリズムを合成することが可能であり, この性質はアルゴリズムの設計に大いに役立っているのであるが, 故障封じ込めの性質をもつ自己安定アルゴリズムにその性質はそのまま利用できなかった. そこで, 本年度の一つの研究として, 故障封じ込めアルゴリズムの合成手法を提案した.
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