平成19年度は、ベクタ画像検索のために必要な前処理(物体領域抽出法)の開発と評価および検索処理部を実現する上で必要となる要素技術の研究開発を目的として研究を行い、以下の成果を得た。(1)ベクタ画像から物体領域を抽出するために、物体領域の輪郭領域と背景領域とのL*a*b*色差に着目し、物体領域の輪郭線を計算機で認識させる方法を提案した。また、複数の物体領域が存在するベクタ画像に対し、物体領域間の内包関係関係をグラフにより表現し、部分領域検索へと応用する方法論を提案した。(2)ゲシュタルト知覚論において定性的に示されている人間の知覚特性を計算論的に定量化し、計算機処理可能な物体領域抽出モデルを構築し、スポーツ映像中の字幕領域の意味推定へと応用した。(3)スケッチから得られる構図と、ベクタ画像から得られる構図とのマッチング法として、ベクタ画像を構成する複数図形要素に対し、重み付き特徴点を抽出し、ベクタ画像の検索問題を、重み付き特徴点集合間の類似度評価問題へと帰着させて解く方法を提案した。ベクタ画像からの重み付特徴点抽出では、図形要素を表現しているベジェ曲線の第一、第四制御点を特徴点として定義し、さらに、各特徴点における曲率変化を特徴点の重みと定義した。重み付き特徴点集合間の類似度評価には最適輸送コストモデルを用いて、評価計算の高速化を実現した。
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