XMLはIT技術の中核をなし、その処理はサーバ型計算機上だけでなく、今後は小型計算機上でも効率的な処理が必須となる。このような背景のもと、今年度はXMLデータの軽量な分散問合せ処理、特に最も柔軟性の高い問合せ言語XQueryに焦点を当て、その処理方式に関する研究を行った。さらに、軽量なXML問合せ処理を可能とするためのデータベースバッファ管理に関する研究を行った。 XMLデータが複数の計算機に分散したとき、それらから情報を統合する際に分散XML問合せ処理が必要となる。そこで本研究ではremote proxyを利用し、分散XML問合せ中の各オペレータを遅延評価によりパイプライン的に動作させる手法を提案した。その結果、問合せ処理時間を大幅に短縮しただけでなく、小型計算機において軽量動作に不可欠な消費メモリ量も抑えることを可能にした。また、分散問合せ中の各オペレータは任意の計算機に再配置することが可能であり、今後最適なオペレータ配置の研究により、問合せ処理をさらに高速化可能である。 一方、軽量なXML問合せ処理のバッファ管理の研究では、データベースのバッファ管理部分の排他制御に、lock-free、wait-freeアルゴリズムを導入することにより、従来ハードウェア、ソフトウェア双方のボトルネックとなるロックやセマフォによる排他制御を排除し、軽量な排他制御方式を実現した。この方式の導入により、XMLデータの問合せ処理全体が効率良く動作することを示した。本手法は、XMLに留まらず、関係データベース、ストレージシステムキャッシュ等、数多くの応用に利用可能である。
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