本年度は、2次元格子状の構造メッシュへのスペクトル分解と、多重調和作用素を線形作用素に組み込むことに成功した。その成果として、静止画像へのノイズフィルタリングと三次元多角形メッシュの補間法に成功した。 静止画像へのノイズフィルターには様々な方法があるなかで、特異値分解を用いたものがある。これは、画像の縦1列の画素値を1つの時系列と思い、横方向に時系列が移り変わっていくとみなして、自己相関行列を作る方法である。この方法では、系列間の相関は取れるが、系列内での相関は取れない。しかし、拡張SSAを用いれば、系列内の相関も取ることができるようになり、ノイズ除去の性能も格段に上げることに成功した。 三次元多面体メッシュの補間法にも、様々な方法がある。その中で自己相関を用いた方法は計算時間が掛かる代わりに、精度良く補間できることができる。ただ、補間問題全般に言えることではあるが、不規則なデータ構造に対して、補間を行うことは容易ではない。そこで、我々は、この問題に拡張SSAを適用した。三次元多面体メッシュなどの不規則なデータを扱うのに、拡張SSAが適しているためその意義は大きい。また、三次元多面体メッシュに多重調和作用素を適用した線形作用素を設計する方法に成功した。これによって、従来の拡張SSAのスペクトル分解よりも滑らかな分解を行うことができるようになった。
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