本年度は、静止画のスペクトル分解とノイズ除去に関して、前年度から、より詳細に研究を進めた。画像のスペクトル分解に、特異値分解を用いたものがある。これは、画像の縦1列の画素値を1つの時系列と思い、横方向に時系列が移り変わっていくとみなして、自己相関行列を作る方法である。この方法では、系列間の相関は取れるが、系列内での相関は取れない。しかし、拡張SSAを用いれば、系列内の相関も取ることができるようになり、スペクトル分解の性能が向上することが期待できる。1特異値分解を利用した方法では、低周波の基底ベクトルには低周波なコサイン波のみで構成され、高周波の基底ベクトルには高周波なコサイン波のみで構成されていた。しかし、拡張SSAを用いれば、低周波の基底ベクトルが、低周波なコサイン波と高周波なコサイン波の重ね合わせで構成されているので、ノイズの除去し難い画像の特徴付ける高周波な部分も取り出すことに成功した。この様な、画像の特徴付ける周波数帯を取り出せる方法は存在せず、画期的な手法であり、今後の研究に期待でき、また、他のデータモデルに関しても同様な効果が期待できる。 更に、本研究成果をブリ-ソフトウェアとして一般公開する準備を進めている。ソースファイルを公開して、より多くの人に、より広い分野で、本手法を利用してもらうことを目的とする。
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