平成21年度は、特にLAN内における動画像符号化の並列・分散処理技術に着目した研究を進めた。特に、分散環境内に圧縮前の動画像を分配する際に必要な簡易圧縮技術について、手法の詳細を詰めると同時に、論文を執筆し、国際会議において研究発表を行った。同時に、簡易圧縮の過程において、対象とするバイト列の性質に応じて個別に分割してハフマン符号化を行う「個別ハフマン符号化」の手法を提案し、実験を行った。その結果、それまでの手法に比べて5~10%程度データ量を削減することが可能となることが明らかになった。簡易圧縮の手法は、今後も発展の可能性があるアルゴリズムであることから、以後は複数のバイト列をパッキングすることにより情報量を削減する手法や、動き検出と組み合わせる手法を検討する予定である。 また、動画像を離れた場所にあるPCに送り、符号化処理を委託する装置を開発して発表を行った。本装置に並列処理アルゴリズムを実装することにより、実環境上における動画像符号化の並列・分散処理に関する実験を行うことができる。本装置の実装に際しては、Windows上に仮想環境を構築し、仮想PC上において動作する実装形態としたため、仮想PC上における符号化・通信性能の評価を行った。その結果、仮想環境と通常の環境の間に符号化性能の差異は見られなかったものの、通信性能においては約1.5倍の通信時間の差が生じることが明らかになった。これらの結果は、今後動画像符号化の並列・分散処理装置に関する研究を進める上で重要な知見となる。
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