平成19年度に量子化学計算プログラムの1つであるGAMESSを使用し、材料設計の入力データ作成と出力データ処理の基礎部分を開発した。そして、ごく簡単な構造の分子を構造最適化するシミュレーションを行って、正しく動作することを確認した。このプログラムは文字列処理を用いており、原型入力ファイル中の座標指定部分を置換して複数の入力ファイルを自動作成し、一方、出力ファイル中の必要なデータを切り出して出力データ処理を行う。今後は技術的に同様のことを行って、実際の材料設計を行うように拡張が可能である。 さらに、分散処理を効率的に行うための実行時間の基礎的な調査を行った。その結果、動作確認を行った簡単な構造の分子でも数分程度の実行時間を要することがわかった。本課題では分散処理を行う際に、処理が終了したスレーブ計算機がマスター計算機に新規ジョブの分配を申請し、必要なデータを受け取る方式を想定している。この方式は、分散実行を行うジョブが小さく、実行時間が非常に短い場合にはマスター計算機がボトルネック化し、分散処理の高速実行が困難になることが知られている。本課題の場合には、その問題は起こらずに高速実行が可能であると考えられる。 さらに、本課題では材料設計シミュレーションによって得られた結果の可視化も行う。可視化結果の一例を使用したデモンストレーションプログラムをこれまでに作成したが、そのプログラムの起動方法マニュアルを作成し、テクニカルメモランダムとして出版した。
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