研究概要 |
本研究は,医療安全確保のために必要とされるインシデント情報の部門や職種の間での横断的な共有・提示と速やかなフィードバックが可能な手法の開発と,病院内での情報流通に関する枠組みの構築を目的としている.本年度は,主に,インシデント情報の横断的な共有と提示を行うため,これまでに収集された多量のインシデントレポートにおけるコード化情報と記述情報を用い,記述情報から形態素解析などの特徴抽出により,部門・職種・発生場面などのコード化情報の関連性を求め,院内関係者に対して必要なインシデントレポートを提示するシステムの開発を行なった. これにより,インシデントの詳細を知るために記述情報は重要である反面,分析に時間がかかり関係者への周知などのフィードバックが不十分であったという問題点を解消し,当事者からのインシデント報告後に速やかに当事者の属する部門だけでなく,関連性の高い部門の医療従事者に対してフィードバックを行なうことが可能であり,類似したインシデントの再発の抑制ができるものと考えられる.また,医療安全管理部門やインシデントレポート閲覧者からの評価や意見を登録できるシステムを開発し,提示するインシデントレポートの選択基準や重要性の判断に関する枠組みについて検討を進めた.さらに,コード化された情報以外の要素として,位置情報に注目し,その動きや発生場所の正確把握を行なう手法について検討と,インシデント報告の入力方式の多様化について検討を実施した.
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