本研究の目的は、ヘッドホンを利用して多チャンネル・サラウンド・コンテンツの録音・編集をうための音楽再生環境の開発を行うことである。この研究の背影としては、若者を中心とする主に屋外でのヘッドホン聴取人口の増加、そしてそれに呼応するように増加する家庭でのサラウンドシスムトいう、二極化しつつある音楽再環境がある。 そこで、多チャンネルの家庭用機器向けコンテンツから、ポータブル機器のヘッドホン再生用コンテンツが自動的に生成できれば、音楽制作者たちの負担は著しく軽減される。本研究では、左右2チンネルしかないヘッドホン再生と、多数のスピーカーを配置できめ室内再生との差異を考え、特に壁面反射による音の拡散に着目して新システムの研究開発を行うことを目的とした。 平成19年度には、室内音響の物理特性の中でも室内残響と音源の距離感に注目した実験を行った。室内残響に関しては、ヘッドホンのためにシミュレーションされた残響音の可聴限を複数の残響特性において測定し、音楽をヘッドホン聴取する際に音質などに影響を与えない程度の残響付加量を知ることが目的であった゜また、音源の距離感に注目した試験では、残響感と距離感の関係について、楽器演奏者および録音技師に参加してもらい、実験を行った。その結果、楽器演奏者と録音技師の間の理想的残響に対する感じ方に大きな差違があることが確認された。 一般的に、音楽に残響を付加することで臨場感や広がり感が増すが、今回の研究により音楽に付加した残響音の可聴限が示されたことで、試聴者の邪魔にならない程度の残響付加が可能になった。また、試聴者によって理想的な残響に大きな違いがあることが確認されたことで、聴取者別のカスタマイズの必要性があることが分かった。このことは平成20年度以降の研究課題のひとつである。
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