研究概要 |
本研究の目的は,人物の作業を妨げずその作業動作をデジタル化するシステムの構築である.本年度の大きな成果としては,「道具を使用した作業者の動作モデル」と「道具のアフォーダンスモデル」の構築が挙げられる.作業者の動作モデルには逆運動学による計算手法をベースにした実時間解法を提案し,対話的に動作生成が行えることを確認した.道具を使用している際の,道具の姿勢や扱い方に起因する幾何学的な制約を積極的に利用することにより,従来の逆運動学を人体動作に適用する上での問題点を低減するだけでなく,作業動作に相応しい運動を生成することとの両立を実現させることができた.道具のモデルとしては,具体的な工具を取り上げ,その扱い方のパターンによって4つのタイプを定義した.それぞれのタイプに対して,動作モデルである逆運動学計算手法が適用可能なモデルの記述を行い,「道具を操作する動作」を容易に生成できる枠組みとした. 以上の二つのモデルを組み合わせたシステムを構築した.コンピュータ上で仮想作業空間を用意し,ネジ締めなどの作業箇所を対話的にマウスなどで指定し,指定された作業内容を実施する動作を生成しながらコンピュータグラフィクスにより可視化するというシミュレーションを実施し開発したモデルの妥当性を確認した. 実作業からその道具の動きなどの幾何情報を取得するというもう一つの目標においては,カメラと姿勢センサとを組み合わせた計測システムを開発した.単一の道具について有効性が確かめられているが,多種多様な道具に対応するためのシステムの拡張には至っていない.この計測システムの拡張と動作モデルとの融合を次年度の課題とする.
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