研究概要 |
前年度に得られた脳活動の観察結果を基に,人同士がコミュニケーションをするときのモデルを作成した.幼児向けのテレビ番組のアニメーションでは,顔や表情の無い「積み木」や「石ころ」等が,各々で自律的に動作して,会話をしているかのように見えるものがあり,それを参考に,単純な図形で構成される抽象エージェントを作成した、抽象的なエージェントの動作であっても,会話をしているように見えるように,エージェントの体型を「円盤」や「球体」にした上で,動作も「伸びる」や「縮む」と単純にした.さらに「手」を付与し,手による「招き入れ」や「断り」の仕草を会話に用いる要素とした。抽象エージェントと人型エージェントの二種類を用いたコミュニケーションを主観評価により調べた.評価結果により,作成した抽象エージェントとその表現は,部分的に人に理解されることがわかり,対話における「話し出し」や「話したい」などの非言語表現の根本となるおおまかなルールを見つけることができた.たとえ人型でなくても,そのルールさえ用いていれば(たとえば,「伸びるような表現」「相手に傾く仕草」が「話したい」ことを示すというルールなど)対話が進められ,形の異なるエージェントやロボットに適用可能な発話交替のための非言語表現の原理の可能性が考えられた. さらに,これらの動作を見たときの脳賦活比較することで,生き物の動きに関連する上側頭溝,側頭回付近や,相手の感情を判断する右下前頭回などの賦活の有無が確かめられる可能性が得られた.
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