研究概要 |
バーチャルリアリティにおける力覚提示の新手法として, 体肢を空気圧カフで圧迫することで擬似的な力覚を提示する手法を提案している. 本手法は外力を直接オペレータに作用させる従来の力覚提示法と比べて, 安全に大きな力を提示できる. また, 軽量な装具によって力覚を提示するのでウエアラブル化が容易である. 過年度の研究では, 前腕遠位部を圧迫することによって, 物体を把持するときの重量感を提示できることを示した. 本年度の研究では, 重量感以外の力覚, すなわち鉛直下方以外の方向への力覚を知覚させることができるかを検証した. 実験の結果, 前腕遠位部の圧迫のみでは知覚が生じなかったが, 手掌を同時に圧迫することによって, 他の方向へも力感を提示することができることがわかった. 手掌への圧迫力が同じであっても, 前腕遠位部の圧迫力を増すことで知覚される力覚も増した. よって, 前腕遠位部の圧迫が上肢の筋収縮感覚を変化させると推察される. また, 圧迫力を変位に比例するよう変化させることで, 弾性力を提示できることがわかった. つぎに下肢を圧迫することによって擬似的な歩行感覚を提示できるかを検証した。実験の結果, 椅子に座った状態で手を振り, 足を5cm程度上下させる足踏みを行いながら, 手の振りに同期させて下腿と大腿を圧迫すると, 擬似的な歩行感覚を提示できることがわかった. 下肢の圧迫は血流改善効果も有するので, 椅子に座りながら歩行感覚が得られ, かつ, マッサージ効果が得られる健康器具としての応用可能性を示した.
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