研究概要 |
昨今,ユビキタスネットワークに関する要素技術の発達により,新たな実時間分散型グループウェアの研究、開発が盛んである。次世代ユビキタスネットワーク社会においては,人の知を共有するだけではなく,人のひらめきや創造性を刺激するなど,知を創発させることが重要となる。本研究は,人の知のうち「気付き」に焦点をあてて,気付きを顕在化させるためのグループウェア技術を開発、評価するものである。具体的応用ドメインは,環境学習としている。 2007年度,以下の研究を行った。 (1)気付きの顕在化に関する基礎調査 気付きの顕在化のための基礎調査として,京都大学フィールド科学教育研究センター上賀茂試験地で取得したデータを用いた検討を行った。ここでデータは,身体装着型センサやビデオカメラなどで,学習者の移動行動,学習行動,発話などを記録したものである。検討の結果,学習者が議論や観察などを行っている様子を事後に振り返る過程に,学習者の気付きを促すきっかけがあることを明らかとした。 (2)学習状況の推定に関する技術検討 人の気付きを促進できるように,実世界学習における人の移動行動(位置情報)の時空間的な分布や変遷から,人の行動や学習状況などを工学的に推定する技術について,基礎検討を行った。その結果,学習者の身体動作や移動行動を記録した時系列センサ情報から,特徴的な滞留行動の出現を観察することによって,彼らの学習状況を一定の粒度と精度で推定できることが明らかとなった。 以上の成果は,「実世界知識の顕在化を行う実時間分散型グループウェア」を実現するための基礎検討として重要である。また,実世界での体験を増幅し,新たな学びの創出に資すための基礎知見としても重要である。
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