研究概要 |
本研究の目的は、臨床現場において現在人手で行われている病名の国際疾病分類体系(ICD-10)へのコーディング作業を支援するため,オントロジーに基づく自動コーディング手法を確立することである。本年度は,そのために必要なオントロジーのプロトタイプ作成,ならびにオントロジーと病名文字列のマッピングの際に必要なリソースの整備を行い,以下の成果を得た。 1. ICD10分類体系の意味構造を表現したプロトタイプオントロジーの構築: (1)ICD10の主要な15章における分類項目の構造化情報と,そこで付与された約60種の用語概念間の意味関係を元にして,これをオントロジー化する際に必要な「疾患概念の記述モデル」の検討を行った。(2)概念定義の木構造中の任意の部分構造に対して「表記ラベル」を付与するようなオントロジーの記述モデルを設計し,それに基づいたエディタの開発を行った。(3)これらを用いて,ICD分類体系が持つ意味関係構造を表現したICDオントロジーのプロトタイプを構築した。 2. オントロジーと入力病名文字列のマッピングに必要なリソースの整備: (1)「病名の構成要素とオントロジー中の表記ラベルとの対応関係情報」を総合しICDコードを決定する,自動コーディングツールの基礎開発を行った。(2)また臨床現場の多様な病名表現に対応するため,「標準病名マスター」を対象に,病名の部分文字列から同一概念に対する表記ラベルセットとその意味関係情報を収集し,ICDオントロジーに追加した。 3. これまでの成果を基に,病名のコーディング可能性について部分的な調査を行い,現在のICDオントロジーが持つ情報の,自動コーディングに向けた有用性を確認すると共に,概念定義の不備やICD特有の分類規則の存在などいくつかの問題点が明らかになった。これを元に,2008年度では概念定義のさらなる整備とコーディングツールの高度化を行う予定である。
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