研究概要 |
■本年度は「国際疾病分類体系(ICD- 10)の意味構造を表現したプロトタイプオントロジー」の拡充、並びに自由入力病名の自動ICDコーディング手法の開発を行い、以下の成果を得た。 1. ICD10の意味構造を記述したICDオントロジーの拡充 (1) 前年度に構築したプロトタイプオントロジーに対し、各章の疾患タイプ毎に構築した「疾患概念の記述モデル」を適用し、より洗練されだ表現方式に基づくICDオントロジーとして再構築した。結果8,385の構成要素概念と68種のロール概念を用いた15,466個の疾患概念定義とその階層構造、並びに各構成要素概念に対応する14,663個の表記ラベルを得た。(2) また臨床現場の多様な病名表記に対応するため、「解剖学的部位の上下関係」や「症状・所見」など、ICD分類情報だけからは得られない、より粒度の細かい知識 (8,033の追加概念と表記ラベル) を標準病名集から収集し、ICDオントロジーを拡充した。 2. ICDオントロジー中の概念が持つ表記ラベル情報を用い、入力病名のN- Best分割解から関連するICDコードを導出するコーディングツールを開発した。ICDオントロジーが持つ情報は標準病名の85%を自動コーディング可能な知識量で、これにより全国病院の自由入力病名の60%が自動コーディング可能という結果を得た。 ■現在WHO(世界保健機構)主導のもとICDの構造化記述が世界規模で取り組まれようとしているが、本研究のICDオントロジーはその先駆けとし、従来例を見ない高い網羅性でそれを実現した貴重なリソースである。またそれに基づく自動コーディング手法は、用例との文字列類似度に基づく従来手法に比べ、(1) 用例の有無に関係なく任意のICDコードへ分類可能である点、(2) 分類理由を出力できる点が優れており、診療情報管理士のコーディング支援あるいは教育ツールへの応用が見込まれる。
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