研究概要 |
今年度は, 提案した未知の遺伝的関連予測(仮説発見)の枠組みと先行研究との比較に焦点を当て, 提案手法の有効性を評価した. 比較対象としては, 類似の著名な先行研究として, FreudenbergとPropping(2002)およびperez-Iratxetaら(2002, 2005)の手法を用いた. 前者については, FreudenbergとProppingが用いたOnline Mendelian Inheritance in Man(OMIM)のデータを利用し, 同様の条件で878の遺伝病の原因遺伝子の予測を行った. その結果, 我々の提案手法はより多くの遺伝病について, その原因遺伝子をより正確に予測できることが分かった. より具体的には, 所与の遺伝病について, humanの全遺伝子をその遺伝病の原因遺伝子としての尤度に基づいて順位づけたところ, Freudenbergらの手法では上位3%以内に順位づけられる真の原因遺伝子が33%であったのに対し, 我々の手法では40%へと向上した. また, Perez-Iratxetaらの手法に関して類似の比較実験を行ったところ, 同様に, より多くの遺伝病について原因遺伝子のより正確な予測が可能であることが分かった. 具体的には, Perez-Iratxetaらの手法では上位8位以上に順位づけられる真の原因遺伝子が47, 上位30位以上に順位づけられる真の原因遺伝子が62であったのに対し, 我々の手法では49, 75の真の原因遺伝子がそれぞれ上位8位, 30位に順位づけられた. これらの結果から, 類似の研究に対する我々の提案手法の優位性・有用性が示された. 本研究課題の成果は, 遺伝的関連研究(genetic association study)を加速し, ひいては遺伝病の発生メカニズムの解明や新薬の開発などを促進するものと期待される.
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