研究概要 |
繊維製品は糸を織ることにより製造が行われるため,必然的に欠陥が現れる.糸欠け,穴あきなどの繊維製品の一般的な欠陥の検査は,従来,人間の目による拡大鏡を用いた目視検査により行われてきた.近年,カメラやスキャナを用いて繊維のディジタル画像を取得し,画像処理・ディジタル信号処理技術を応用して自動的に欠陥検査を行う方法が提案されている.しかしながら,従来の信号処理的手法では,欠陥の有無については可視化できているものの,糸間隔や交差角といった繊維の設計仕様を繊維上のすべての位置で満たしているかどうか,という検査を自動で行うところまでは至っていない.また,製品の自動合否判定についても実現されていない.さらに,これらの処理の高速化についてはまったく検討されていない. そこで本研究では,繊維の数学的モデル化による問題の定式化を行い,そのモデルをもとに繊維上のすべての位置における設計仕様検査・合否判定技術の開発を行う.さらに,その検査処理の高速化技術についても検討を行う.本年度は, (1)電磁波遮蔽繊維のモデル化による問題の定式化,(2)設計仕様検査のための信号分析技術の開発,(3)確率モデルを用いた仕様検査方法について検討を行った.(1)については,2次元周期的パルスモデルによるメッシュ繊維の記述法を開発し,そのスペクトラムやガボール変換係数,分布関数などの性質を導出できた.(2)については,ガボール変換の中心周波数シフトによる高感度な欠陥検査技術を開発した.(3)については,ガボール係数振幅値の確率密度関数が,中心周波数シフトに伴いガウスからレイリー分布に変化することに着目し,AICを用いた適切な確率モデル推定を提案した.その結果を利用して,繊維欠陥部を2値画像として自動的に抽出でき,さらに欠陥の種類についても自動識別できる検査システムを提案した.
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