研究概要 |
繊維製品は糸を織ることにより製造が行われるため, 必然的に欠陥が現れる. 糸欠け, 穴あきなどの繊維製品の一般的な欠陥の検査は, 従来, 人間の目による拡大鏡を用いた目視検査により行われてきた. 近年, カメラやスキャナを用いて繊維のディジタル画像を取得し, 画像処理・ディジタル信号処理技術を応用して自動的に欠陥検査を行う方法が提案されている. しかしながら, 従来の信号処理的手法では, 欠陥の有無については可視化できているものの, 糸間隔や交差角といった繊維の設計仕様を繊維上のすべての位置で満たしているかどうか, という検査を自動で行うところまでは至っていない. また, 製品の自動合否判定についても実現されていない. さらに, これらの処理の高速化についてはまったく検討されていない. そこで本研究では, 繊維の数学的モデル化による問題の定式化を行い, そのモデルをもとに繊維上のすべての位置における設計仕様検査・合否判定技術の開発を行う. さらに, その検査処理の高速化技術についても検討を行う. 本年度は, 繊維製品の合否判定のための統計的学習方法について検討を行った. 繊維から得られるディジタル画像は, 照明や布のたわみなどにより, 前年度に検討するモデルとは差があることが予想される. したがって, 判定精度を高めるためには, 多数の画像を取得し, それを用いてモデルを修正ないし再構築する必要がある. 実際に多数の画像を取得しモデルについて検討を行った結果, 厳密にはレイリー分布あるいはガウス分布ではなく, これらを一般化したライス分布でモデル化する方が厳格であることが分かった. しかしながら, 検査結果に影響を及ぼすほどの差はなく, 昨年度検討しレイリーあるいはガウス分布でもモデルとしては十分であることが分かった. また, 検査処理のハードウェア実装についても検討を行った. ハードウェア記述言語VHDLを用いて検査に必要となるモジュールを実装し, 動作を確認した. 演算精度は16bit固定小数で十分であった.
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