平成19年度は、映像と音声でマルチモーダルに発話を記録し、同一幼児の経年変化を観測できるマルチモーダル幼児行動コーパスの方法論に基づき、音韻獲i得過程の分析に必要なコーパスの構造を検討し、哺語に関するマルチモーダル行動記述を持ったコーパスを構築した。以下、研究提案書のテーマ別に研究成果を述べる。 1、データ収集:動き回る幼児の音声を安定した音質で収録するため開発したリュック型のウェアラブル音声収録装置を用いて、マルチモーダル幼児教室に参加した幼児8名の音声を収録した。年間32回の授業を実施し、300時間分の音声データを蓄積した。 2、システム開発:開発済みのマルチモーダル行動観察システムを拡張し、音声波形・音声短時間スペクトル・音声パワー・基本周波数といった音声情報を、映像にリンクさせて提示する機構、及び特徴的な箇所に手動でラベリングできる機構を設計・実装した。 3、哺語観察:発話がなされた状況を考慮して音韻獲得過程を分析するため、発話者・月齢・発話内容・音韻ラベル・取り組みの内容・しぐさ・目線・周囲の状況などの記述項目を設計した。開発した行動観察システムを用いて、幼児1名の月齢13ヶ月〜30ヶ月の340発話に対し、上述のマルチモーダル行動記述を付与したコーパスを構築した。この行動記述によって、成長に伴う発話の音韻的特徴の変化を、強く主張する、控えめに発言するといった状況別に詳細分析できることを確認した。
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