研究概要 |
ビデオカメラを用いて屋外シーンを撮影した映像に含まれる物体の検出・認識・追跡は,画像情報処理やコンピュータビジョンの基礎的な技術であるが,実環境において常に精度良くそれらを実現することは非常に困難である.これに対して本研究では,シーンの幾何構造の利用によって高精度化を図る.たとえば,映像の中に含まれる建物や道路などがあらかじめ分かっていれば,人が歩きうる場所をある程度絞り込むことができるため,人物の誤検出を回避できると考えられる. シーンの幾何構造は人の手で与えることができるが,将来カメラ数が膨大になったときには非現実であり,また,時間が経過して構造が変化する場合に対応することも困難である.そこで,本課題では,画像のアピアランス(見え)から自動的にシーンの幾何構造を抽出する手法の実現を目指し,研究を行ってきた.研究最終年度の今年度は以下の点に注力して研究を行った. 1. 昨年度までに開発した人物移動軌跡からの幾何構造復元手法の改良:昨年度までに開発した人物移動軌跡と画像の色情報から通路を抽出するアルゴリズムを多様なシーンに対して適用し,その改良を行った.屋外シーンを処理するアルゴリズムのテスト用に用いられている映像についても良好な結果が得られることを確認した. 2. 得られた幾何構造を効果的に利用して人物移動軌跡を獲得する手法の考案:前項のアルゴリズムで得られた幾何構造を利用して,人物を正しく発見・追跡するアルゴリズムを考案した.そこでは,人物が存在する位置をノード(節点)とし,その間のエッジ(辺)で隣接する位置での類似性を表現する.さらに,1.で得られた幾何構造を加味しながら,正しい人物移動軌跡を出力する手法を考案し,その有効性を確認した.これにより1.で得られた結果が効果的に利用できることになる.
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