日本のアニメーションにおける善玉と悪玉の声は日本文化における良い人物、悪い人物の声のステレオタイプを反映すると考えられる。研究代表者は現在までに、日本のアニメにおける善玉と悪玉の声を音声学者の内省に基づく受聴分析によって記述し、その声を刺激音として聴取実験を行うことによって、日本のアニメにおける典型的な善玉と悪玉の声のステレオタイプの特徴記述を試みてきた。本研究ではその結果に基づき、より多様な声を実験・分析の対象として、日本文化における様々な人物像と声の音声的特徴との対応を、音声学的手法を用いて記述することを試みる。さらに、機能的磁気共鳴画像診断装置(fMRI)を用いた音声器官の生理的観察や音響分析を補うことにより、より客観的で一般化できる結果を得ることを目標とする。本年度は、まず、今まで聴取実験に用いてきたrandom splicingという言語内容をマスクする手法が、本研究の目的にふさわしいか検討するため、イスラエルでヘブライ語話者にrandom splicing処理を施したアニメ音声とそうでないものを聞かせ、被験者が抱く印象が異なるか調べた実験の結果を発表した。また、分析対象となる音声を増やすため、候補となる資料の視聴を行い、分析対象となる資料を選定した。分析対象から聴取実験に用いるのにふさわしい音声を収録し、実験の刺激音声に加工する作業に着手した。さらに、来年度の生理的観察の準備として、現在までに得たMRIデータを論文としてまとめるため、関連先行研究のまとめを行った。
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