医療現場では内視鏡観察と同時に病理部の大きさや形状を知ることが重要であるとされている。ところが、内視鏡の光学的特性や構造の制約のために、その画像を目視しただけでは経験の浅い検査医も熟達した経験者でも観察時の計測誤差が常に大きいと痛感している。このような状況から、大きさや形状の正確な計測ができる内視鏡が必要とされている。内視鏡観察時に形状を取得することにより、信頼性や安全性の高い診断が可能となる。本研究では内視鏡画像の濃淡の変化を手がかりとして、胃や腸などの内壁の三次元形状をリアルタイムに復元する手法の確立を目指す。そのために本年度も昨年度に引き続き四つの点光源による照度差ステレオおよび点光源による透視投影モデルでの解析に関する研究を行った。 従来の照度差ステレオでは画像濃淡は対象表面の傾きのみに依存しているが、点光源および透視投影モデルを導入することで、局所的光源方向、視線方向および光源からの距離に依存することになる。そこで2つの点光源および透視投影モデルで観測した形状既知物体の画像から予め学習したニューラルネットワークを利用して、対象の表面の傾きおよび三次元位置を推定を試みた。それにより、物体表面の傾き、特に曲率は局所的光源方向、視線方向および光源からの距離に依存しており、1つの光源によって照らされた物体の画像においても推定できる形状情報が存在することが判明した。しかしながらそれらの透視投影画像におけるモデル化や解析は容易ではなく、これらの関係の解析を二光源の照度差ステレオに応用する方向で進めたが思うように進捗できなかった。今後はこれまでに得られた研究成果を順次発表していくとともに二光源での反射特性分析に努める予定である。
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