研究概要 |
H19年度は錘に基づくパターン識別の理論を完成させ,新たなパターン識別手法として「錘制約部分空間法」を提案した。一般にパターン認識では,特徴ベクトルは非負制約を受けることが多く,そのような性質を持つ分布は原点を頂点とする錘として表現される。提案手法はそのような錘構造を陽に取り入れた手法であり,部分空間法と同様に錘の方向に沿ったスケール倍や加法などの特徴ベクトルの広い変動を許容する一方で,原点周りの広がりを錘により精度よく近似することにより識別性能が向上している。また,部分空間法と異なり次元の設定が容易(不要)となることも利点の一つである。具体的には提案手法は3つの手法を含んでいる。一つめはサンプルの張る厳密な凸錘に基づくもの,二つめはその厳密な凸錘を近似する簡単な包括凸錘に基づくもの,三つめは厳密な凸錘を近似する円錐に基づくものである。以上のように錘を用いて入力ベクトルを識別する提案手法は,新たな部分空間法と位置づけられる。 提案した錘制約部分空間法はサンプル分布を単峰,つまり一つの錘で表現できることを想定した手法である。しかし,一般の分布は多峰となることも多い。そのような多峰分布に対してはクラスタリングにより単峰の各クラスタに分割し,クラスタ毎の錘へと問題を帰着させる。そこで分布の錘構造に注目して,von Mises-Fisher分布を利用した新たなクラスタリング手法(vMF Mean Shift法)も提案した。 以上の識別手法とクラスタリング手法を顔及び人検出の実験に適用し,従来手法と比較することでその有効性を確認した。
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